そんな生産技術部に異動した私は、「わからないことがあれば何でも聞いて」と歓迎されました。
今まで教育を受けていた2人とは違い、最初にCADを教えられました。後から考えれば、営業部から課長に回されてくる工程設計依頼書を私に任せられるようにして、1つでも自分の仕事を減らしたかったのでしょう。
CADの教育は、プログラム起動のしかたとログインアカウントを情報管理部に教えてもらい、最初は取扱説明書を渡され、説明書に載っている例題を製図することを指示されました。
それが終わると、実際の工程設計依頼書で「見て覚えて」と言って工程設計のやり方を黙ったまま1度設計して見せた後、「昔オレが書いたヤツ(行程設計依頼書)の控えがロッカーにあるから、あとはそれを参考にして」と言われて教育は終わりました。
工程設計の1工程の加工率の限度は?、テーパー部の角度の理由は?、R部の数値の理由は?、部分によって違う切削代の理由は?という肝心な数値を決める根拠は何一つ教えてくれませんでした。1度やって見せてくれた時に聞いても、「黙ってよく見てろ」と言われて終わりでした。
かといって、私が全部無根拠に決めれば適当に書くなと罵倒されるのは目に見えています。
わからないので聞いても、「今忙しいからあとでね」とか、「ちっ、しょうがねーから教えてやるか」とわざわざ口に出してから「そこはこの値にしとけばいいよ、これでわかったでしょ」と自分の仕事に戻ってしまいます。肝心の数値の根拠はやはり教えてくれません。
「わからないことがあれば何でも聞いて」とは一体何だったのか?質問してもズレた答えしか返してくれず、問い直そうとしても「あー忙しい忙しい」と口に出してこれ以上聞くなという態度を取ります。
このあたりで私にもようやく分かりました。課長は自分で教える気は全くないのだと。自分が常々自慢しているように、自費での社外講習などを受けて自分で覚えろと思っているのだと。
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